エッセイ
2025年07月02日 21時34分

『続 窓ぎわのトットちゃん』が教えてくれた、自由と愛の物語

こんにちは、北海道の小さな町で書店員をしている私です。今日は、私の心をぐっと掴んで離さなかった『続 窓ぎわのトットちゃん』についてお話ししたいと思います。黒柳徹子さんの「トットちゃん」シリーズは、私にとっても特別な存在で、まるで昔の友人に再会したような気持ちにさせてくれるのです。

トットちゃんとの再会

『窓ぎわのトットちゃん』を初めて手に取ったのは、私が小学生の頃でした。当時、祖父がよく読み聞かせをしてくれたことを思い出します。あのころの記憶は、どこか温かくて、少しばかりのノスタルジーを感じさせます。トットちゃんは私にとって、自由で、愛に満ちた冒険の象徴でした。だからこそ、続編が出たと聞いたとき、すぐに手に取りました。

続編であるこの本は、トットちゃんの両親の話から始まります。黒柳守綱さんと徹子さんの母親との出会いが描かれているのですが、ここがまたロマンティックなんですよね。ベートーベンの第九交響曲の演奏会で出会ったというのは、いかにも夢のようなお話で、少しうらやましくもあります。

戦争の影と家族の絆

『続 窓ぎわのトットちゃん』では、戦争という厳しい現実が描かれています。トットちゃんの父が出征するシーンは、心に刺さるものがありました。ヴァイオリンを手放し、軍服を着た父の姿。これがどれほどトットちゃんの心に刻まれたか、想像するだけで胸が痛みます。私自身、祖父から戦争の話を聞いたことがあり、そのときの祖父の表情を思い出しました。

戦争が終わり、家族が再び東京で暮らし始める場面も印象的です。疎開先から戻った一家が、また新たな生活を築く姿に、家族の強い絆を感じました。そんな中で、トットちゃんが「子どもに上手に絵本を読んであげるお母さんになりたい」と思うのも、彼女らしい夢だなと感じました。この夢が、彼女を70年も続く仕事へと導くとは、当時のトットちゃんには思いもよらなかったでしょうね。

優しさを紡ぐ物語

この本を読み終えたとき、なんだかほっとするような、心が温かくなるような感覚がありました。トットちゃんが経験したこと、彼女が見てきた世界は、現代の私たちにも大切なメッセージを伝えてくれます。トモエ学園での自由な教育、家族との愛情、そして戦争の悲しみ。これらすべてが一つの物語として織りなされていて、読むたびに新しい発見があるのです。

実を言うと、この本を読むときは、いつも少しだけ心の準備がいります。それは、トットちゃんの物語が私の心の奥深くにある何かを揺さぶるからです。でも、その揺さぶりが、私にとってはとても大切な時間です。時には涙し、時には笑い、そしていつも最後には、そっと本棚に戻して、また会える日を楽しみに待っています。

『続 窓ぎわのトットちゃん』は、ただの続編ではありません。トットちゃんの物語を新たな角度から描いた、心の旅のような一冊です。もしまだ読んでいない方がいたら、ぜひ手に取ってみてください。まるでトットちゃんと一緒に過ごしたあの日々をもう一度体験するかのような、そんな感覚を味わえると思います。

最後に、この本に出会えたことに感謝しつつ、今夜もまた、心を整えるための読書を楽しみたいと思います。

rio_reads

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北海道の小さな町で、静かに本を手渡す日々を送っています。子どもの頃、祖父にたくさんの昔話を読んでもらったことが、今でも心の芯に残っています。流行の本よりも、少し古びた本や、静かに棚の奥に佇む本に惹かれます。

物語の余韻や、そっと心に残る言葉を大切にしたい。そんな気持ちで、読んだ本をゆっくり、ていねいに紹介しています。派手ではないけれど、誰かの暮らしをちょっとだけあたためる、そんな本と出会えたら嬉しいです。

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