心の奥底に静かに響く「変見自在」との出会い
本を読むことは、私にとって「静かな対話」のようなものです。ページをめくるごとに著者の考えや感情に触れ、時には自分の中でくすぶっていた感情が引き出されることもあります。今回手にした高山正之さんの『変見自在』は、そんな静かな対話の中で心の奥底に響くものがありました。
朝日新聞と中国、そして私の知らなかった歴史
この本を手に取ったきっかけは、タイトルに惹かれたからです。「ヒットラーは生きている」という副題には、何か現代に通じる隠されたメッセージがあるのではないかと感じました。そして読み進めるうちに、著者が描く朝日新聞と中国の関係に驚かされました。
大学時代、私は理系畑で歴史や政治にはほとんど関心がありませんでした。でも、社会に出て働くうちに、漠然とした不安が心の隅に芽生えてきたんです。この本を読んで、その不安の正体が少しずつ見えてきた気がします。例えば、朝日新聞の報道がどのように国際関係や歴史認識に影響を与えているか。そんなことを考えるようになったのは、きっと高山さんの語り口が、単なる批判に留まらず、私たちが普段見過ごしてしまう背景を浮き彫りにしてくれるからだと思います。
心に残る、著者の視点
特に印象に残ったのは、戦後の歴史認識を巡る話題です。戦勝国によって作られた日本の「侵略国家」というイメージは、私たちの生活の中でどれほど根付いているのでしょうか。私は普段、仕事で技術的な問題を解決することが多いのですが、歴史や政治問題は”正解”がないからこそ、考える価値があるのかもしれません。
高山さんの文章を読むと、彼がどれほどの思いでこの本を書いたのかが伝わってきます。例えば、慰安婦問題についての朝日新聞の関与や、その後の影響についての記述。これらのテーマは、正直言って重いし、読むのも辛い。でもその中に、私たちがこれからどのように過去と向き合っていくべきか、そんなヒントを与えてくれる気がしました。
ひとりの読者として、心に刻むもの
この本を読み終えて、私は一つの大きな感情を抱きました。それは、情報を鵜呑みにせず、自分の目で見て考えることの重要性です。高山さんの言葉を通して、メディアの報道が必ずしも正しいとは限らないということを改めて考えさせられました。
私が特に心に残ったのは、戦後の日本とアメリカ、中国、韓国との関係に関する部分です。これまで何となくしか考えていなかった歴史の背景が、少しずつ形を成していく感覚がありました。著者が示す事実の一つ一つが、私の中で点と点を結びつけ、これまで見えていなかった全体像を浮かび上がらせてくれたのです。
本を読み終えた後、心の中に静かに広がる感情があります。これは、私がこれからどう歴史や報道と向き合っていくか、そしてどのように自分自身の考えを形成していくかという問いかけでもあります。
『変見自在』は、決して派手な本ではないけれど、じわじわと心に染み込んでくる良書でした。歴史や政治に興味がない人でも、読み進めるうちに何かしらの感情が芽生えるのではないでしょうか。静かに泣ける、そんな一冊です。