ノンフィクション
2025年05月14日 08時03分

心をたぎらせるジャパニーズドリーム:山分ネルソンの逆転劇を追って

はじめに出会った「ジャパニーズドリーム」

「逆転力、激らせろ−希望を咲かせて」というタイトルを目にしたとき、正直なところ少しだけ躊躇しました。派手なタイトルが目を引くけれど、なんだか大げさなのでは、と。でも、ページを開いた瞬間、私のその考えはすぐに消え去りました。この本は、山分ネルソンという一人の人間の壮大な人生物語であり、深く心に刻まれる体験の数々が詰まっていました。

山分ネルソンさんの人生は、まるで映画のようです。彼はマレーシア出身で、50歳にして日本で大きな成功を収めています。でも、私が特に心を動かされたのは、その成功の陰に潜む数々の挑戦と苦難のエピソードでした。ネルソンさんは、私が住む北海道の大学にも学びに来ていたことがあるそうで、なんだか親近感が湧きます。

異国での挑戦と決断

ネルソンさんが日本に来たのは、片道切符と15万円だけを持ってのこと。英語が得意で英語圏の大学に進むのが普通の選択だったというのに、彼が選んだのは日本でした。それには小さい頃からの日本への憧れがあったといいます。私はその話を聞いて、なんだか泣きそうになりました。普通の人なら、こんなに異国に飛び込むのは怖いと思うでしょう。でも、ネルソンさんはその未知の世界に飛び込み、挑戦を続ける勇気を持っていました。

日本語も話せなかったネルソンさんが、2年間語学学校で勉強し、その後北海道大学の薬学部へ進学するというのは、まさに逆転力の塊です。彼の経験は、私たちに「可能性は無限だ」と教えてくれます。どんなに恐れ多くとも、自分の信念を貫き通すことで、道は開けるのだと。

医師への道、そして政治家としての挑戦

ネルソンさんは医師になることを夢見て、大阪大学医学部への進学を決めます。その決断がどれほど勇気のいるものだったか、想像するだけで胸が熱くなります。彼の父親がその決断に反対した話も心に残りました。普通なら、医学部に合格したら誰もが喜ぶはず。でも、彼の父親は研究者としての道を勧めたのです。この話を聞いて、なんだか親子の関係についても考えさせられました。親が子に期待することと、子が自分に期待することが違うことって、意外と多いですよね。

そして、医師としての経験を経て、彼は政治の世界へと飛び込みます。これもまた大きな挑戦です。医療現場の現実に憤りを感じて、政治家を目指すなんて、普通の人には思いつかないことかもしれません。ネルソンさんは、地盤も看板も鞄もない状態から立ち上がり、選挙に立候補します。その勇気と行動力には、ただただ驚かされます。

希望を咲かせるクリニックとその先に

2013年、彼は「希咲クリニック」を開設します。このクリニックの名前には、「希望を咲かせる」という意味が込められているそうです。なんだか、それを聞くだけで心が温かくなります。クリニックを開くという決断もまた、彼の人生における大きな一歩です。十三という土地に根付いたクリニックは、彼の思いを受け止め、地域の人々に愛される場所になっているのでしょう。

ネルソンさんの物語は、まさに「ジャパニーズドリーム」を体現していると言えます。彼が日本で見つけた希望や夢は、私たちにも大切な何かを教えてくれます。この本を読み終えた今、私の心には「自分も勇気を持って一歩を踏み出そう」という思いが芽生えています。

「逆転力、激らせろ−希望を咲かせて」は、読む人に勇気を与え、心を熱くさせる一冊です。ネルソンさんが歩んできた道のりを辿ることで、自分の中にも小さな希望の種を見つけられるかもしれません。ぜひ、あなたもこの本を手にとって、ネルソンさんのジャパニーズドリームに触れてみてください。

rio_reads

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北海道の小さな町で、静かに本を手渡す日々を送っています。子どもの頃、祖父にたくさんの昔話を読んでもらったことが、今でも心の芯に残っています。流行の本よりも、少し古びた本や、静かに棚の奥に佇む本に惹かれます。

物語の余韻や、そっと心に残る言葉を大切にしたい。そんな気持ちで、読んだ本をゆっくり、ていねいに紹介しています。派手ではないけれど、誰かの暮らしをちょっとだけあたためる、そんな本と出会えたら嬉しいです。

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