「小さな習慣で人生を変える」ー『習慣超大全』BJ・フォッグが教えてくれたこと
小さな一歩が大きな変化を生む
初めて『習慣超大全』を手にしたとき、正直言って、少し分厚いなと思いました。タイトルに「超大全」とあるだけに、何か大げさなことが書かれているのではないかと身構えてしまったのです。でも、読み進めるうちに、そこに書かれていることの真逆のシンプルさに驚かされました。そしてそれが、私の心にじわじわと浸透してきたのです。
本書の筆者、BJ・フォッグはスタンフォード大学行動デザイン研究所の所長で、彼が提唱するのは「小さな行動」から始めるという考え方です。例えば、筋トレをしたいならトイレの後に腕立て伏せを一回することから始める。そんな話を聞いたとき、なんだか肩の力がふっと抜けました。そうか、全てを一気に変える必要はないんだ、と。
この「小さな行動」が私の中で響いたのは、きっと私自身が何かを始める際に、つい高すぎる目標を設定してしまう癖があったからです。例えば、毎朝ランニングをしようと決意しても、雨の日や疲れた日には続かない。そんな時、この本を読んで「シューズを履くだけでもいい」と言われた気がしました。なんだか許されたような気持ちになったのです。
習慣を築くということ
習慣を築くのは難しいと言われますが、フォッグのアプローチはそれを手の届くものにしてくれます。彼の提案は、「自然に行動できるようにする」こと。つまり、毎日の生活にスムーズに組み込める小さな行動を見つけ、それを他の習慣に結びつけることなのです。
私はこの考え方を試してみることにしました。毎晩寝る前にストレッチをする習慣をつけたいと思っていたので、スリッパを脱ぎながらつま先に手を伸ばすことから始めました。その行動が自然な流れの中に組み込まれたおかげで、少しずつストレッチの時間が増えていきました。「習慣を築く」というと、何か大がかりなことのように思えますが、実はこんなに小さなことから始められるのです。
このように、フォッグの言葉は、何かを始めることに対しての心理的なハードルをぐっと下げてくれます。それは、まるで新しい道を歩くときに、最初の一歩を優しく後押ししてくれる友人のような存在です。
モチベーションに頼らない仕組み
本書の中で特に印象に残ったのは、モチベーションに頼らないという部分でした。私たちはよく「やる気が出たら始めよう」と思いがちですが、フォッグはそれを必要としないと言います。小さな行動はモチベーションが低くてもできるからこそ、習慣化につながるという考え方です。
このアプローチを知ったとき、私は過去にモチベーションが続かずに挫折した様々なことを思い出しました。例えば、資格の勉強を始めては辞め、ダイエットを決意しては挫折し…。でも、この本を読んで、やる気に頼らずに習慣を作れるということを知り、何かが変わった気がしました。
実際に、私は新しい言語を学ぶことに挑戦してみました。モチベーションが低いときでも、たった5分間だけでもスマホで単語を確認する。そんな小さな行動を続けているうちに、気づけば、言語学習が日常の一部になっていました。これがフォッグの言う「小さい行動」の力なのでしょう。
読後の余韻と新しい視点
『習慣超大全』を読み終えたとき、私は静かに感謝の気持ちを抱いていました。大きなことを成し遂げるために、小さな一歩を大切にする。そんなシンプルなメッセージが、私の日常を少しずつでも変えてくれると感じたからです。
そして、何よりもこの本が教えてくれたのは、「自分を責めずに済む方法」でした。完璧でなくてもいい。小さなことから始め、それを続けていけば、必ず何かが変わる。そんな希望を与えてくれる一冊でした。
派手ではないけれど、私にとって『習慣超大全』は、静かに泣ける、そしてじわじわと心に残る本です。日常の中で何かを変えたいと思っている人に、ぜひ手に取ってほしいと心から思います。