「二宮金次郎の教えに学ぶ:心が豊かになる『積小為大』の哲学」
こんにちは、北海道の小さな町の書店員です。この間、本棚の片隅で一冊の本が目に留まりました。それは、二宮金次郎、尊徳さんの考え方を、彼の7代目子孫である中桐万里子さんが解説した本でした。正直、最初は少し地味な印象だったんです。でも、この本を手に取って、ページをめくるうちに、心がじんわりと温かくなるのを感じました。
菜種を蒔けば油が手に入るということ
尊徳さんの教えの中で特に心に残ったのは、「菜種を蒔けば油が手に入る」というシンプルな事実です。これを読んだとき、私は祖父の畑のことを思い出しました。祖父はいつも、季節ごとに種を蒔き、丹精込めて作物を育てていました。収穫の時期になると、祖父は満面の笑顔で野菜を収穫し、それを家族で分け合って食べるのが常でした。その時の暖かな記憶が、尊徳さんの言葉に重なりました。
尊徳さんは、日々の当たり前の作業を積み重ねることの大切さを教えてくれます。それは、何も特別なことではないけれど、やり続けることで確実に成果が得られる。私たちが日常的にしていることも、きっと同じなんだろうなと、ふと思いました。
長期的な視野の重要性
また、尊徳さんが「遠くをはかるものは富む」と語る章では、長期的な視野を持つことの重要性を教えられました。これには少しハッとさせられました。私は、つい目の前のことに追われて、先のことを考える余裕をなくしてしまうことが多いのですが、この言葉は、少し立ち止まって考える時間をくれました。
実生活での例を挙げると、私はよく、次の季節のことを考えずに、その時々の欲しいものを買ってしまうことがあります。でも、尊徳さんの教えを思い出すと、今の楽しさだけでなく、未来の自分がどうありたいかも考えないといけないなと反省します。
誰もができることを積み上げる
尊徳さんは、誰もができることを積み上げることの大切さを説いています。たとえば、菜種を蒔くことで油が手に入るというのは、特別な能力が必要なわけではなく、誰にでもできることを続けることの重要性を示しています。これを読んで、私も日々の小さなことをもっと大切にしようと思いました。
本書の中で紹介される「たらいの水」の話も印象的でした。自分の方へ水をかき集めようとすると逃げていくが、相手の方へ押しやろうとすれば自らに返ってくる。これを読んだとき、私は、友人との関係を思い出しました。自分のことばかり考えていた時期があったなと反省し、もっと相手のことを考えようと思いました。
尊徳さんの教えは、私たちが日常で忘れがちなことを思い出させてくれます。彼の言葉は、まるで静かに語りかけるようで、自分の心の中にそっと入り込んできました。
心にやさしい読書の時間
この本を読み終えたとき、なんだか心が優しくなる読書だったなと感じました。尊徳さんの教えは、現代を生きる私たちにとっても、価値あるものです。特別なことをしなくても、誰もができる小さなことを積み重ねることで、大きな成果を得ることができる。それを教えてくれるこの本は、そっと本棚に置いておきたい一冊です。
日々の生活に追われる中で、ふと立ち止まって考え直すきっかけをくれる。そんな、心に優しい読書の時間を提供してくれました。