心の贈り物を探して:『儀物軌式』と私の小さな旅
こんにちは。今日は、ちょっと不思議な本を紹介したいと思います。『儀物軌式』という、江戸時代の贈答品について書かれた書物です。最初にこの本に出会ったとき、正直に言って、私は何を手に取ってしまったんだろうと戸惑いました。だって、贈り物の仕方なんて、そんなに深く考えたことなかったから。
贈り物の背後にある心
この本を開くと、まず目に飛び込んでくるのは、贈答品の詳細な図解です。例えば、宮重大根がどのように包まれて、どんな紐で結ばれているのか。その記述を読んでいるうちに、ただの物を贈るだけではない、そこに込められた思いが伝わってきたんです。贈り物って、単なる物のやりとりではなく、相手に対する敬意や感謝の表現なんだなと、改めて気づかされました。
私が最初に心を動かされたのは、淑姫に贈られる宮重大根の話でした。10本の大根を最上級の「無類」で贈ることになっているという細やかな心遣い。この「無類」という言葉が、なんだか特別に感じられて。普段は気にしないような、贈る側の細やかな心遣いに触れた気がしました。
季節とともに巡る贈答の風景
贈り物はただの物のやりとりではないということを、この本を通じて何度も感じました。特に興味深かったのは、贈り物が季節や宛先によって微妙に変わるところ。例えば、同じ大根でも、贈る相手によって本数や質が変わる。それを知ったとき、私はちょっとしたタイムスリップをした気分になりました。江戸時代の人々が、どんな気持ちで贈り物を準備していたのかを想像するのが楽しかったんです。
それに、この本には過去の贈呈事例も紹介されていて、時代の流れと共に変わる贈り方や習慣も見えてきます。普段はあまり意識しないけれど、贈り物を通じて歴史を感じることができました。
贈り物の意味を考える
私自身、贈り物をするときに、どうしても「何を贈ればいいんだろう」と迷ってしまいます。でも、この本を読んで、贈り物って自分の気持ちを伝えるための手段なんだと、改めて気づきました。相手に何を伝えたいのか、そのためにはどういう風に贈ればいいのか。『儀物軌式』は、そんな贈り物の背後にある心を教えてくれた気がします。
本を閉じた後、私はふと、自分が贈り物をしたときのことを思い出しました。子どもの頃、母の日にお花を贈ったことがありました。まだ子どもだった私は、お花屋さんで一番きれいに見えた花を選んで、母に渡しました。その時の母の笑顔を見て、贈り物っていいものだなって感じたんです。『儀物軌式』を読んで、その時の気持ちを思い出しました。
……たぶん、贈り物って、相手に対するちょっとした心遣いの表現なのかもしれません。結論は出せないけれど、これが今の私の読み方です。
この本を通じて、私は贈り物の意味を少しだけ理解できた気がします。贈り物をするときの小さな工夫や気配り、それが相手にどう伝わるのかを考えるのは、なんだか楽しいことなんだと思います。だから、この本は単なる史料ではなく、私の心に小さな旅をさせてくれる本でした。