「資本主義の影と光:ダグラス・ラシュコフ『マインドセット』を読んで考えたこと」
資本主義の光と影に触れて
ダグラス・ラシュコフの『マインドセット』を手に取ったのは、友人が「これ、ちょっと考えさせられるよ」と言って勧めてくれたからでした。正直、その時はあまり期待していなかったんですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれていったんです。
彼が描く資本主義の「暴走」とでも言うべき現状は、まるで映画のストーリーを追うような感覚で、次から次へと興味深いエピソードが出てきます。特に印象に残ったのは、ジャック・ウェルチの話でした。彼が洗濯機を売るよりも、購入資金を貸す方が利益が出ることに気づいたというエピソード。これを読んでなんだか、資本主義って本当に「お金を生むための仕組み」なんだなと改めて感じました。
富裕層の不安とその対策
それから、ラシュコフが描く「富裕層の不安」には驚かされました。資産を持っている人たちが、環境破壊や社会不安といった世界の終焉に備えているという話。なんだか、彼らの恐怖をリアルに感じてしまいました。特に、イーロン・マスクがAIに反抗されたときのために火星に逃げ込む計画を立てているというところ。これ、映画やドラマで見るような話じゃないですか。
「資本主義は植民地主義」との視点も、考えさせられるものでした。経済の成長がどうしてもどこかを収奪する形になってしまうという指摘。これは、私たちが日常的に使っている便利なものたちが、どこか遠くの誰かの犠牲の上に成り立っているのかもしれないと、ふと思ってしまいました。
代替え案の不足とその可能性
ただ、ラシュコフの提案する代替案については正直物足りなさを感じました。彼の主張する環境保護や地域経済の重視は、理想的だけれども具体的にどう実現するのかが描かれていないと感じました。でも、ここで思い出したのが、大学時代に読んだ一冊のノンフィクションです。あの時も、物足りなさを感じながらも、それがきっかけで自分の考えが大きく変わった経験がありました。
この本を読み終えて思ったのは、資本主義を否定するのではなく、どこかでバランスを取ることが必要なのかもしれないということです。もしかしたら、私たち一人一人が、小さな行動からでも変えていけるのかもしれません。例えば、地元の商店で買い物をするとか、再生可能エネルギーを選ぶとか。
終わりに
『マインドセット』は、派手さはないけれど、静かにじわじわと心に浸透してくる一冊でした。ラシュコフの語り口は、読者に考える余地を与えながらも、しっかりとしたメッセージを伝えてくれます。この本を読んで、私たちが今立っている場所を見つめ直すきっかけになればと思いました。
読み終わった後、なんだか静かに泣けてくる。そんな感情を抱かせる本です。資本主義の影と光、どちらも知ることは、これからの時代を生きる上で大切なことだと感じました。