水と歴史が織りなす街、パリの隠された物語—『凸凹で読みとくパリ: 水に翻弄されてきた街の舞台裏』を読んで
こんにちは、皆さん。今日はちょっと不思議な本を紹介したいと思います。タイトルは『凸凹で読みとくパリ: 水に翻弄されてきた街の舞台裏』。著者は佐川美加さんです。この本を手に取ったきっかけは、パリという街への純粋な好奇心でした。皆さんも知っての通り、パリは華やかでロマンチックなイメージが先行しがちですが、実はその足元には意外と知られていない歴史が隠されているんですよね。
水の都、パリ?
パリといえばセーヌ川。この川がなければ、今のパリはなかったかもしれない。そんなことを考えながらページをめくると、まるでパリの地層を掘り下げていくような感覚に陥ります。本書は、水と地形の視点からパリを読み解くという、ちょっと変わった切り口で進められていきます。最初に驚いたのは、ノートル=ダム大聖堂の建設場所にまつわる謎です。「なぜあんな水に浸かりやすい場所に?」と、ずっと疑問に思っていましたが、ここでしっかりその理由が語られていました。
一万年前のセーヌ川とビエーヴル川の「河川争奪戦」の話に始まり、シテ島が実は緊急時の避難場所だったという説。パリの街がただの観光地ではなく、自然と人間のせめぎ合いの歴史を秘めた場所であることが、この本を通じてじわじわと伝わってきます。
古代から現代まで続くストーリー
歴史というと、どうしても大きな出来事や人物に目が向きがちですが、本書は地形や水の流れという、「地味だけど大事な要素」に焦点を当てているんです。読み進めるうちに、これがなんだかパズルを解くみたいで楽しくなってきました。例えば、ルーヴル宮の構造が川の流れの変化によって影響を受けたという話。こんなところまで水の力が及んでいたのか、と感心してしまいました。
この本を読んでいると、パリを歩くときに見える景色が変わるだろうなと感じます。特に、セーヌ川沿いを歩くときに、この本で知った歴史の背景を思い出して、街の表情が違って見えるようになるんじゃないかな。実際にパリに行ったことがある人も、これから行く予定の人も、ぜひ一度この視点でパリを歩いてみてほしいです。
静かに泣ける、パリの物語
本書を読み終えたとき、じわじわと胸に迫るものがありました。決して派手な内容ではないし、感情を揺さぶるというよりは、静かに心に沁みてくる感じ。歴史の重みと、それを支えてきた自然の力。人間は自然に翻弄されながらも、その中で生き延び、時には自然を利用してきたのだということが、しみじみと伝わってきます。
パリという華やかな街を支えてきたのは、水と地形の知識。そんなことを考えると、私たちの住む街もまた、知られざる物語を抱えているのかもしれない。自然と人間の共生の歴史を知ることは、私たちの未来を考える上でも大切なことだと思いました。
『凸凹で読みとくパリ』は、じわじわ、静かに泣ける、良書です。派手さはないけれど、読み終わった後に心に残るものがあります。パリが好きな方、歴史に興味がある方、そして水の力に魅了される方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。