エッセイ
2025年09月21日 10時10分

『歌う言葉 考える音』が教えてくれた、言葉と音楽の哲学

最初に感じた違和感と興味

『歌う言葉 考える音』というタイトルを見たとき、正直言って「どういうこと?」と感じました。音楽ってもっと感覚的なものだと思っていたし、哲学と結びつくなんて考えたこともなかったんです。でもその違和感が、逆に私を引きつけました。ヤマモトショウさんのこれまでの経歴を知るにつれ、彼がどのようにして音楽と哲学を結びつけているのか、興味が湧いてきました。

ヤマモトさんは、東京大学で数学を学んだ後、哲学を専攻し、音楽の道に進んだという異色の経歴を持っています。それだけでも十分に興味深いですが、さらに彼がアイドルグループの楽曲を手掛けているというのも驚きでした。「哲学的音楽論」という言葉にぴんときたのは、その背景を知ったからかもしれません。

「好き」と「嫌い」が教えてくれること

この本で特に印象に残ったのは、「好きの解像度を上げる」というテーマです。私たちの「好き」って、実は曖昧なものだとヤマモトさんは言います。たしかに、私も「好きな色は?」と聞かれると、あまり考えずに「青」と答えてしまうけど、それがなぜ好きなのかなんて深く考えたことはありませんでした。

そして、ヤマモトさんは逆に「嫌い」からアイデアを生み出すことを勧めています。「嫌い」っていう感情は、無関心よりも深いところで自分に何かを訴えていると考えた時、なるほどと思いました。私も子供の頃から虫が嫌いで、特にハチなんて近寄るのも嫌でしたが、そのおかげでハチの生態には詳しくなった気がします。不思議ですよね、嫌いなのに詳しくなるって。

ヤマモトさんの言葉を借りれば、「嫌い」を掘り下げることで「好き」の解像度が上がるとのこと。これにはかなり共感しました。思わず、自分の中の「嫌いなものリスト」を頭の中で確認してしまい、その中から何か新しい発見があるかもしれないと考え始めました。

言葉の力と音楽の可能性

ヤマモトさんは、作詞をする際に天啓のようなインスピレーションではなく、言葉を整える作業が大部分だと言います。これは、私たちが普段何気なく使っている言葉の組み合わせに、新しい意味や感情を生み出す可能性があることを示しているのではないでしょうか。

「言葉は音楽を通して新しい命を得る」と言えるかもしれません。音楽を聴くとき、私たちはそのメロディーやリズムだけでなく、歌詞が伝えるストーリーや感情にも心を動かされます。ヤマモトさんの哲学的なアプローチは、音楽が持つ力を再認識させてくれました。

私は普段、音楽を聴くときに歌詞をあまり気にしないタイプでしたが、この本を読んでからは歌詞にも耳を傾けるようになりました。言葉がどんな風に音楽と結びつき、私の心に響いてくるのかを考えるようになったのです。

本を読んで変わったこと

この本を読んでから、私は自分の「好き」や「嫌い」をもっと大事にしようと思うようになりました。それは、自分自身を知る手がかりになるだけでなく、新しい視点を持つことにつながるからです。ヤマモトさんの言葉を借りれば、「個性的に」自分を表現するための道具になるのかもしれません。

音楽と哲学という、一見相反するようなテーマを結びつけたこの本は、私にとって新しい世界を開いてくれたように感じます。音楽を聴くこと、そして言葉を選ぶことの両方に、もっと深い意味があると教えてくれました。

派手じゃないけど、静かに心に響く、そんな良書だと思います。読んでみると、じわじわと心に沁みるものがあるので、ぜひ手に取ってみてください。

晴斗

晴斗

福岡在住、静かな読書が好きな会社員です。ノンフィクションや地方の物語を読みながら、自分の暮らしをゆっくり整えています。派手な本よりも、じんわり心に残る本が好きです。読書は、静かだけれど豊かな旅だと思っています。

タグ
#ヤマモトショウ
#作詞
#哲学
#感性
#音楽