エッセイ
2025年07月17日 16時35分

「受け流す」ことの価値を考える: 大前研一の視点を通して

トランプ大統領の要求をどう見るか

大前研一さんの著書を読んで、まず私が感じたのは、まるでニュースを超えた生々しい現実が描かれているような感覚でした。特にトランプ大統領に対する彼の分析は、私の中にどこか無意識に芽生えていた不安を引き出したのです。

大前さんは、トランプ大統領の政策を「受け流す」ことが重要だと説いています。初めてこの言葉を目にしたとき、私はつい苦笑いをしてしまいました。なぜなら、それは私がこれまでの日常で無意識に採ってきた方法だったからです。会社での上司とのやり取りや、時に家族の無理な要求に対する私の反応が、まさにその「受け流す」という行為そのものでした。やり過ごすことで、何とか波風立てずにやってきた私にとって、大前さんの言葉は妙にしっくりくるものがありました。

日本の観光立国化の夢

次に、彼が提案する日本の観光立国化について触れたいと思います。これを読んでいると、私の中で学生時代に旅行で訪れた数々の地方都市の風景が思い出されました。観光地だけでなく、地元の人々が営む小さな店や、そこで出会った人々のことを思い出すと、観光というのはただの経済活動以上のものだと思えてきます。

大前さんの言う「観光立国」は、単なる経済規模の拡大を目指すものではなく、日本の文化そのものを世界に広めるものではないでしょうか。高野山の宿坊や大洲城のような特別な体験は、ただの観光地巡りでは得られない深い感動を与えてくれると思います。私自身、あの時の旅で触れた日本の歴史や文化が、今も心の中に鮮やかに残っていることに気づかされます。

教育が持つ本当の意味

教育についての章では、思わず自分の学生時代を振り返りました。大前さんの指摘する「先生の言うことを聞く教育」の弊害は、私自身も身に覚えがあります。あの頃、言われたことをただこなすだけで、どこか大切なものを見失っていたように思うのです。

一方で、ユダヤ人の家庭教育に触れ、私は驚かされました。個性を尊重し、得意分野を伸ばすというアプローチは、まるで私が理想としていた教育の形そのものでした。大前さんの次男のエピソードを読んで、自分ももっと自由に学び、好きなことを追求して良かったのではないかと少し悔しくなりました。とはいえ、今こうして本を通じて学び続けられることに感謝しています。

政治と私たちの距離感

最後に、大前さんが述べた政治家の問題についてですが、正直なところ、私は普段あまり政治に関心を持っていません。しかし、この本を読んで、少し考え方が変わりました。小選挙区制の問題は、どこか他人事のように思っていた私にとって、政治と私たちの生活がいかに密接に繋がっているかを再認識させられる良い機会でした。

特に、衆議院の比例復活当選の話では、政治家の質がどう社会に影響を与えるのかを初めて真剣に考えさせられました。以前、東北でボランティアをした際に感じた「地域と政治の距離感」が、まさにここに繋がっているのかもしれないと、ふと思いました。

この本を読んで私が感じたことは、日々の生活の中で私たちは何を見て、どう受け止めるかが重要だということです。それは、単に政治や経済の話に限らず、私たち自身の生き方や選択にも大きく関わっているのだと思います。大前研一さんのこの本は、私の中にある小さな疑問や不安を引き出し、それに対する考え方のヒントを与えてくれました。

高橋 湊

高橋 湊

静かに本と向き合うのが好きな会社員。ノンフィクションや地方の物語を読みながら、自分の暮らしを少しずつ耕しています。派手さはないけれど、じわじわ染みる本が好きです。

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