「頭のよい人の定義」と心の引っかかり:一冊の本が教えてくれたこと
こんにちは、北海道の小さな町で書店員をしている私です。今日は、ちょっとした不思議な読書体験をお話しします。最近読んだ本が私の心に強く残ったので、その感想を共有したいと思います。その本は、著者の遠山尚秀さんが書いた『頭のよい人の定義』という一冊です。
この本を手に取ったとき、正直なところ、少し構えてしまいました。「頭のよい人とは?」なんて、何だか上から目線のような気がしたんですよね。でも、ページをめくっていくうちに、その印象は少しずつ変わっていきました。
頭のよい人とは?
著者の遠山さんは、ゲームクリエイターとしての経験を通して「頭のよい人」を定義しています。その定義が面白くて、「仕事の成果を見せたときに、上司や顧客から『なんか違うな』と言われない人」だそうです。これを読んで、私は「ああ、なるほど」と思いました。私も思い当たる節があります。上司やお客様から「なんか違う」と言われた経験、ありますよね?その瞬間のちょっとした絶望感、共感できる人は多いのではないでしょうか。
私自身、書店で仕事をしていると、時々「こういう本を探しているんだけど」と言われることがあって、その意図を正確に汲み取れなかったときのもどかしさを思い出しました。お客様が本当に求めているものを理解するために、著者が提案する方法が参考になりました。
相手のイメージを引き出す
遠山さんは、相手のイメージを引き出すために、まず相手の理解度を把握することが大切だと言います。普段ゲームをするのか、といった軽い質問から始めるのだとか。この方法、なんだか日常の会話にも通じるものがあって、私はとても興味深く感じました。思い返せば、私もお客様との会話の中で自然と試しているかもしれません。「この本、気になっているんですよね」と言われたとき、まずはその方の好みや興味を探ろうとします。それが、どんなに小さなヒントでも、次の提案に繋がっていくんです。
このプロセスを経て、遠山さんは初回の打ち合わせで相手がイメージしていることを引き出し、頭の中で構築していくと書かれていました。私の生活に落とし込むと、日々の書店業務にも活かせそうです。相手の言葉の裏にある本当のニーズを掴むということ、これが「頭のよさ」の一つの形なのかもしれません。
頭の中の会議
そして、もう一つ印象的だったのが、著者が提案する「頭の中で会議をする」という方法。デザイナーや顧客、技術者を頭の中に集めて、アイデアを練り上げるという方法です。これは、なんだか面白いですね。私の祖父がよく「心の中で昔話を語り合う」と言っていたことを思い出しました。彼は、昔の話を思い出しながら、自分の中で物語を紡いでいたのでしょう。
遠山さんの方法は、より実践的で、仕事に役立つものです。私が本を選ぶときも、心の中でその本を手に取ったお客様の顔を思い浮かべることがあります。その人がその本を読んでいる姿を想像して、どんな反応をするのかを考えてみる。こうした小さな想像が、実際に役立つことがあるんです。
正しい選択をするための壁
遠山さんが語った「正しい選択をするための壁」という話も心に残りました。楽しいゲームを作っている途中で、「違う方向に変更してほしい」と言われたとき、どうするか。経験を積むほど、そのままやりくりしようとしてしまいますよね。でも、本当に賢い人は、今までの成果にとらわれず、最初からやり直す選択をできるのだそうです。この話を読んで、私は少し胸が痛みました。なぜなら、私もついつい過去の努力に固執してしまうことがあるからです。
何かをやり直すことは勇気がいりますよね。でも、遠山さんの語るように、今のベストを考え続けることが大切なんだと、改めて感じました。時には、過去の自分を乗り越えるための選択が必要なのです。それができたとき、私たちは少しだけ頭がよくなれるのかもしれません。
この本を読んで、私は改めて「頭のよい人」という概念を考え直しました。決してIQの高さや知識の豊富さだけではなく、相手の気持ちを汲み取る力や、柔軟な発想を持つこと、それを実行に移す勇気…そういったものが、本当の「頭のよさ」なのかもしれません。
遠山さんの本を読んで、心に引っかかる部分がたくさんありました。これからも、日々の生活の中で、相手を理解し、柔軟に対応することを大切にしていきたいと思います。
もし、あなたも何かに引っかかっているときがあったら、この本を手に取ってみてください。きっと、何かのヒントになるはずです。心にそっと寄り添う、そんな一冊でした。