エッセイ
2025年12月01日 03時03分

『鳥打ちも夜更けには』を読んで感じた、心のさざ波

心の中の港町

こんにちは。今日は金子薫さんの『鳥打ちも夜更けには』について、私の心に浮かんださざ波を、つれづれと書きたいと思います。この本、最初に手に取ったときから何か不思議な予感がしていました。表紙に描かれた、どこかしら孤独な雰囲気を醸し出す港町のイラストが、私の心を引きつけたんです。あの瞬間、私はもうこの物語の中に足を踏み入れていたのかもしれません。

物語の舞台は架空の島。そこで繰り広げられるのは、主要産業を漁業から観光に変え、アゲハチョウを保護するために海鳥を制限するという、なんとも奇妙な設定です。この設定を聞いた瞬間、私は子どもの頃に読んだ絵本のような、ちょっとした違和感とワクワク感を同時に感じました。現実とは少しずれた世界に触れることで、私たちは何を見つけることができるのでしょうか。

鳥打ちたちの心の声

物語の核となるのは、沖山、保田、天野の三人の鳥打ちたち。それぞれが独自の信念を持ち、時に対立し、時に共感し合いながら、島の運命に関わっていく姿は、私たちの現実社会の縮図のようにも感じました。沖山が語り手となって、彼の視点から見える世界は、まるで私たち自身がその場にいるかのように鮮明です。

沖山の言葉ひとつひとつが、私の心に染み込んできました。彼の迷いや葛藤は、まさに私たちが日常の中で感じるものと何ら変わりありません。鳥打ちという仕事に対する彼の複雑な感情が、私にはとてもリアルに感じられて、時には彼の心の声に耳を傾けながら、自分の中にある同じような感情を見つけたりもしました。

寓話から見える現実

この物語、ただの奇想天外な話では終わりません。むしろ、政治的な寓話として、私たちにいくつもの問いかけをしてくるのです。読んでいるうちに、私はこの島の将来を考えながら、私たちの社会のあり方にまで思いを馳せていました。経済と自然、個人の信念と社会のルール。どちらを優先すべきか、簡単には答えが出ない問いばかり。

ただ、そんな重たいテーマを扱っているにもかかわらず、金子さんの文章はとても軽やかで、読みやすい。まるで、海風に吹かれながら軽やかに踊るアゲハチョウのように、私の心にすっと入ってくるんです。この感覚、読書においてとても大切だと思うんですよね。難しい話を難しく語るのではなく、自然に心に染み入るように。

読後の余韻

読み終えた後、私はしばらく本を抱えてぼんやりしていました。心の中に小さなさざ波が残っていて、それが少しずつ広がっていくような感覚。人生の中で必要な問いかけをしつつも、最後には私たちの心にそっと寄り添ってくれる、そんな物語だったと思います。

この本を読み終えて、私はまた一つ、新しい視点を手に入れたような気がしました。それは、日々の生活の中で、どんなに小さなことでも大切に感じられる心の余裕かもしれません。本を閉じた後も、心の中に残るこの感覚を、皆さんにもぜひ味わってほしいです。読書って、やっぱり楽しいですね。

咲

本を読むのが、とにかく好きです。小説、ノンフィクション、マンガ、絵本、自己啓発、レシピ本まで、なんでも気になる「ジャンル雑食派」。休日はよく本屋さんやカフェで一日過ごしています。

「本はもっと気軽に読んでいい!」が私のモットー。本を難しく語りすぎるのはちょっと苦手で、「楽しい」「泣いた」「めっちゃ好き!」と素直に感じたまま、書評を書いています。

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