エッセイ
2025年11月30日 03時02分

「シン・アナキズム: 世直し思想家列伝」──静かに心を揺さぶる、新しいアナキズムの息吹

まさかアナキズムという言葉が、僕の心にじわじわと浸透してくるとは思いませんでした。『シン・アナキズム: 世直し思想家列伝』を手に取ったのは、単なる好奇心からでした。正直なところ、アナキズムって聞くと、なんだか怖いというか、過激なイメージがあったんですよね。でも、この本は全然違いました。まるで、昔から知っている友人が静かに語りかけてくるような、そんな不思議な感覚を味わいました。

アナキズムは暴力ではない?

まず、アナキズム=暴力=テロリズム、という固定観念を持っていた自分に気づかされました。この本では、著者の重田園江さんが新たな視点を提供してくれます。彼女自身が、5年前に「突然、自分はアナキストだと啓示を受けた」というエピソードを交えながら、アナキズムの本質を探っていきます。まるで、彼女の話をカフェで聞いているような、そんな親しみやすさがありました。

この本に出てくるジェイン・ジェイコブズやヴァンダナ・シヴァといった人物たち。彼らの行動や思想が、実はとても身近で、私たちは日常の中で彼らの影響を受けているのだと気づかされます。特にジェイコブズがニューヨークの旧市街を開発から守るために行った活動なんて、まるで自分の町を守るために立ち上がったような、そんな共感を覚えました。

ねことアナキズム

また、この本でユニークだったのは、ねことアナキズムの関連性です。プルードン研究者の森政稔さんが登場する章では、ねこが「自分に忠実なアナキスト」だという視点が紹介されます。これがなんだか可笑しくて、でも妙に納得できるんです。ねこって、自分の好きなように生きてますよね。そんな姿を見ていると、アナキズムの自由さを感じずにはいられません。

僕自身、ねこを飼っているわけではないですが、友人の家でねこがのんびりと毛づくろいをしている姿を思い出しました。あの自由気ままな姿こそ、アナキズムそのものなのかもしれないと微笑んでしまいました。

社会の不条理と向き合う

デイヴィッド・グレーバーの「シット・ジョブ」と「ブルシット・ジョブ」の話は特に印象的でした。「社会に必要なのに待遇の悪い仕事」と「社会に必要ないのに待遇が良い仕事」という対比は、まさに現代社会の縮図ですよね。エンジニアとして働いていた頃の自分を思い出しました。自分の仕事がどこに位置づけられるのか、改めて考えさせられました。

この本を通して、物理的脅威を必要とせずにお互いを理解し合うことがどれほど重要なのか、静かに問いかけられた気がします。アナキズムが描く未来は、もしかしたら僕たちが心のどこかで求めているものなのかもしれません。

読了後、なんとも言えない余韻が残りました。派手なアクションや劇的な展開があるわけではないけれど、心の中で静かに何かが変わったような気がします。これは、静かだけど熱い、そんな良書です。ぜひ、皆さんもこの本を手に取ってみてください。新しい視点や気づきをもたらしてくれるはずです。

晴斗

晴斗

福岡在住、静かな読書が好きな会社員です。ノンフィクションや地方の物語を読みながら、自分の暮らしをゆっくり整えています。派手な本よりも、じんわり心に残る本が好きです。読書は、静かだけれど豊かな旅だと思っています。

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