古典文学
2025年11月28日 15時03分

『口訳 太平記 ラブ&ピース』: 戦争と平和の狭間で感じたこと

不思議な体験の始まり

『口訳 太平記 ラブ&ピース』を手にしたとき、正直に言うと、少し尻込みしました。古典だし、しかもあの『太平記』ですよ。学校の授業で名前を聞いたことがある程度で、どんな話だったかすらも曖昧。それを町田康が「口訳」するというから、いったいどんな風に料理されているのか、恐る恐るページをめくりました。

読み始めてすぐ、私は驚きました。あの重厚で難解そうな古典が、まるで自分の目の前で人が喋っているかのような軽妙さで描かれているのです。実際に、後醍醐天皇や楠木正成がそこにいて、彼らが何を考えて、どう行動したのかを、まるで友達から聞いているような感覚でした。これには、思わず笑ってしまう場面も多く、特に多治見次郎の慌てふためく様子なんて、思わず心の中で「わかる、わかるよ」と呟いてしまいました。

戦争と平和のアイロニー

この本を読む中で、戦争と平和というテーマが一貫してアイロニカルに描かれているのが印象的でした。例えば、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの「ラブ&ピース」が話題に出てくる場面。これには驚かされました。あの時代背景に、そんな現代的なメッセージが混じり合うなんて。最初はふざけているようにも思えたのですが、よく考えると、こうしたアイロニーが戦争の本質を突いているのかもしれません。戦争はいつも平和を口実に行われる、この皮肉。それが、なんだかとてもリアルに感じられました。

こうしたテーマは、私の中でちょっとしたトリガーになり、普段のニュースを見ているときにも「ああ、これもそうだな」と思わせることがあります。歴史は繰り返すと言いますが、こうしたアイロニーをきちんと理解することが、歴史の教訓を学ぶことなのかもしれません。

過去と今を結ぶもの

この本を通して感じたのは、過去と今がこんなにも繋がっていることへの新鮮な驚きです。『太平記』という遠い昔の物語が、今の自分たちに何を語りかけているのか。それは、ただの歴史の勉強ではなく、私たちが今、どのように生きて、どんな価値観で物事を見ているのかを問いかけているように思えます。

特に、町田康が作り出す言葉のリズムや、キャラクターたちの会話の生々しさが、私をその時代に引き込んでいきました。まるで、タイムマシンに乗って過去に行き、その場の空気を感じ取るような。歴史の人物たちが、ただの教科書の中の存在ではなく、同じ人間として感じられる。そんな体験をくれるのが、この本の最大の魅力です。

私にとっての『太平記』

結局のところ、『口訳 太平記 ラブ&ピース』は、私にとって歴史を学び直すきっかけになりました。そして、それは単なる学び直しではなく、今を生きる自分自身を見つめ直す時間でもあったのです。日常に埋もれてしまいがちな「平和」について考えさせられ、また、戦争というものがどれほど複雑で、そして皮肉に満ちているかを改めて実感しました。

この本を通じて、私は戦争と平和、そして人間の矛盾に触れ、そこに自分なりの解釈を見出しました。これが正しいのかどうかはわかりませんが、少なくとも今の私にとっては大切な気づきです。もし、あなたがこの本を手に取ることがあれば、きっとそれぞれの物語と出会い、何かを感じ取ることができるはずです。結論は出せないけれど、これが今の私の読み方です。

一ノ瀬悠

一ノ瀬悠

京都で哲学と文学を学ぶ大学生です。読書は、まだ言葉にできない気持ちと静かに向き合う時間。小さな喫茶店で本を読みながら、たまに日記のような読書ノートを書いています。

物語のなかに静かな絶望や、小さな希望を見つける瞬間が好きです。

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