小説
2025年09月19日 21時16分

『騎手マテオの最後の騎乗』が教えてくれた、人生の第二幕を信じる力

競馬と人生の重なり

「競馬小説」と聞くと、正直に言って最初はちょっと身構えてしまいました。というのも、競馬にはあまり馴染みがなくて、馬券を買ったことなんて一度もない私が、果たして楽しめるものなのかと。でも、フリードリヒ・トールベルクの『騎手マテオの最後の騎乗』を手に取った瞬間から、そんな心配は杞憂に終わったんです。

本を読み進めるうちに、競馬というものがただの「ギャンブル」ではなく、まるで人生の縮図のように感じられてきました。年老いて引退を勧告されたマテオが、もう一度だけ馬に乗りたいと願うその姿には、なんだか自分の人生を重ねてしまう部分がありました。特に仕事で「もう一度、挑戦したい」と思う瞬間って、誰にでもありますよね。そんなとき、マテオがどうしても諦めきれなかった気持ちが、私の心にもじんわりと沁みてきました。

心に残るマテオの挑戦

物語の中で彼が選んだのは、かつての雇い主である伯爵に頼み込んで、ダービーに出ること。この無謀とも思える挑戦に、私は「やっぱり無謀だよ!」と心の中で叫びつつも、どこかで応援せずにはいられませんでした。だって、誰にでも「これが最後だ」と思う瞬間ってあるじゃないですか。そんな時に、どうしても諦めたくない気持ち、わかります。

実はこの本を読んでいる間、私はずっと自分の過去の経験を思い出していました。昔、会社で大きなプロジェクトがあって、私はそのリーダーに抜擢されたんです。でも、最初は全然うまくいかなくて、「もう無理かな」と思ったことも。でも、どうしても諦められなくて、周りのサポートも得ながら最後までやり切った経験があります。その時の気持ちが、マテオの姿に重なって、ぐっときてしまいました。

マテオの勝利と私たちの未来

さて、マテオは勝ったのか? それは本を読んでのお楽しみということで、ここでは控えます。でも、彼の挑戦が観客に、そして私たち読者に伝えたものは、勝利そのものよりももっと大切な「自分を信じる力」だったと思うんです。彼が示してくれたのは、どんなに年を重ねても、どんなに失敗を重ねても、もう一度立ち上がる勇気の価値。

現実のデザーモは、マテオにはなれなかったけれど、マテオのように再び輝きを取り戻す人は、きっと私たちの周りにもいるはず。そして、そういう人を見るたびに、私たちもまた新たな一歩を踏み出す勇気をもらえるんですよね。

『騎手マテオの最後の騎乗』は、そんな勇気を与えてくれる物語です。競馬に興味がなくても大丈夫。人生の第二幕を信じる力を、この本からぜひ受け取ってみてください。

人生の遊び場としての読書

読書って、やっぱり人生の遊び場だなあと改めて思いました。気軽に手に取って、心の中で旅をするような感覚。そんな風に本を楽しむって、なんて素敵なんだろうと。だから、私の読書感想文が賞を取れなくてもいいんです。ただ、この本を読んで楽しかった、心が動かされた、そう感じられること自体が一番のご褒美だな、と。

もし、今の自分に何かしらの「もう一度」がある人がいるなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。そして、マテオと一緒に自分の心の中のダービーを駆け抜ける感動を味わってほしいなって思います。

咲

本を読むのが、とにかく好きです。小説、ノンフィクション、マンガ、絵本、自己啓発、レシピ本まで、なんでも気になる「ジャンル雑食派」。休日はよく本屋さんやカフェで一日過ごしています。

「本はもっと気軽に読んでいい!」が私のモットー。本を難しく語りすぎるのはちょっと苦手で、「楽しい」「泣いた」「めっちゃ好き!」と素直に感じたまま、書評を書いています。

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