心の深層に触れる旅:『揺れる輪郭』に導かれて
こんにちは。今日は、グレアム・マクレー・バーネットの『揺れる輪郭』を読んだ感想をお話しします。私は福岡出身の20代後半、もともとは理系出身でエンジニアとして働いていました。でも、大学時代にたまたま手に取ったノンフィクションがきっかけで読書にのめり込むようになったんです。そんな私がこの本を手にしたのは、タイトルに何か心を揺さぶられるものを感じたからでした。
不思議な魅力の入り口
『揺れる輪郭』を開くと、すぐにその不思議な魅力に引き込まれました。この本は、著者らしき「私」がGMBと名乗り、オーサー・サロゲートとしてブライスウェイト博士という昔のサイコセラピストに興味を持つところから始まります。博士に治療を受けた匿名女性の記録ノートが見つかり、ここから物語は一気に迷宮入りしていくんです。
最初は正直、少し戸惑いました。「GMBって誰?」「ブライスウェイト博士ってどんな人?」と疑問が次々に湧いてきて、まるでミステリーのような感覚。けれど、その疑問が徐々に解き明かされていく過程がたまらなく面白くて、ページをめくる手が止まりませんでした。
心の奥底を探る旅
この本で特に印象的だったのは、「レベッカ・スミス」という偽名でセッションに潜入する女性の存在です。彼女は姉の自殺の原因を探るためにブライスウェイト博士の治療法に疑問を持ち、そしてその過程で自分自身の内面と向き合うことになります。この部分を読んでいると、思わず「自分だったらどうするだろう?」と考えずにはいられませんでした。
私自身、理系のバックグラウンドを持っているため、物事を論理的に考えがちです。しかし、この本では感情の揺れ動きが非常にリアルに描かれていて、読んでいて心の奥底が揺さぶられる感覚を覚えました。特に、レベッカという別人格が独り歩きし始める場面では、自分の中にもそんな人格が潜んでいるのではないかと、少し怖くなったりもしました。
静かに胸を打つ結末
物語が進むにつれて、GMBによるブライスウェイトの伝記と、女性のノートが交互に現れる構成に、私は次第に引き込まれていきました。そして、物語が終わりに近づくにつれ、静かに心に染み入るような感動が押し寄せてきたんです。
一見、派手さはないけれど、読み終わるとじわじわと心に残るものがある。そんな本でした。結末にたどり着いたときには、静かに泣けてしまいました。たぶん、それは本の中で語られる人間の脆さや強さ、そして再生の可能性が、私の心のどこか深い部分に触れたからでしょう。
この本を通じて、私は「静かな対話」をしているような感覚を味わいました。自分の中の迷いや不安と向き合いながら、それでも希望を見出そうとする力をもらった気がします。読書って、やっぱりいいものですね。