「365日」の考えるパン:常識を疑い、自分の感覚を信じるパン作りの哲学
この本を手に取ったのは、なんというか、直感的なものだったんです。パンの本というより、もっと深くて、何か私の心に響くものがあるような予感がしたんです。『「365日」の考えるパン』、そのタイトルを見たとき、私の中で何かがきらりと光った気がしました。
パン作りの哲学に触れる
杉窪章匡さんという名前を知ったのは、実はこの本が初めてでした。でも、読み進めるうちに彼のパン作りに対する情熱と哲学に、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。彼の言葉は、パン作りを超えて、私たちの日常や仕事の中での「当たり前」を問い直す力を持っています。
たとえば、彼が日本のバゲットを見て疑問に思ったこと。フランスのバゲットと何が違うのか、どうして同じように作れないのか。それは、私たちが日常で「そういうものだ」と受け入れていることに対して、本当にそうなのか?と問いかける姿勢なんです。
彼のパン作りの哲学は、「素材のために」という一言に尽きると思います。国産小麦の味を最大限に活かすために、彼はあらゆる製法を見直し、再構築しています。発酵の目的も「味を熟成させる」から「火通りを良くする」に再定義する。こうしたシンプルでありながら大胆な発想の転換に、私は心を動かされました。
五感を信じることの大切さ
杉窪さんの話で印象的だったのは、数値データに頼らず、自分の五感を信じるということ。彼は小麦粉を口に入れ、味わい、香りを確かめる。それが彼にとって一番の判断基準です。これは、私たちが何かを判断するときに大切なことを思い出させてくれます。データも大事だけど、最終的に信じるべきは自分自身の感覚。
この姿勢は、私が日々の生活や学びの中で心がけていることでもあります。何かを学ぶ時、知識を得ると同時に、自分の感覚や直感を大切にする。それが、私にとっての「学び」の本質です。そして、この本を読んで、改めてその大切さを実感しました。
デザインが問題解決になる瞬間
また、杉窪さんが語るデザインの話も興味深かったです。パンの形が、ただの見た目の問題ではなく、どう食べさせるかを設計する手段であるという視点。これは、私たちが日常で直面する問題に対して、どのように解決策を見つけるかという示唆を与えてくれます。
「クロッカンショコラ」の話は特に印象的でした。細長い形にすることで、食べる時に誰もが先端からかじるように誘導される。その食べ方を計算することで、味わいのベストバランスを提供することができる。これを読んで、私も自分の生活の中で何かをデザインする時に、もっと意図的に考えてみようと思いました。
新しい視点を得る旅
この本を読み終わった後、私は自分の生活を少しだけ見直すことにしました。毎日のルーティンや、無意識にやっていること。それが本当に必要か、もっと良い方法はないかを考えるきっかけになったんです。
『「365日」の考えるパン』は、ただのパンの本ではなく、新しい視点を与えてくれるものでした。常識にとらわれず、自分の感覚を大切にすることの大切さを教えてくれた一冊。パン作りを通して、こんなに多くのことを学べるなんて、やっぱり本って面白いですね。
……たぶん、そういうことなんだと思います。結論は出せないけれど、これが今の私の読み方です。あなたも、ぜひ自分の目で確かめてみてください。